「吹奏楽部希望か、覚悟しとけよ」

 それが、目の前に現れるなり、男の教師が私に言った一言だった。
 一瞬で自分の心が固まったのを覚えている。

 後に聞いた話によると、
 その教師こそが、私が入部しようと思っている吹奏楽部の顧問らしい。
 名前は、加藤弘司。
 年齢は三十代前半で、英語教師。
 趣味は音楽と英会話。
 
 ―――そこまでは、普通の教師のプロフィールだった。

 でも、最も重要と言っても過言じゃない、
 彼の〝性格〟を知ったとき、
 私は全身の血の気が引く音を聞いた。


 彼は―――加藤弘司は、
 
 自分の考える音楽を創り上げ、
 自分の望むハーモニーを生み出し、
 自分の欲しい音を奏でさせるその為なら、

 手段も選ばない、
 ―――とんでもないドSだということを。