「いっ...いいわよぉ~そんな、ねぇ」




そう言いながら鍵ではなく財布を取り出し1万円札を抜き、加賀君に渡す。


...渡すじゃなくて、力ずくで持たせた。




「じゃぁね~」




笑顔で言ったつもりだけど、多分私の顔は恐ろしく引きつっていたであろう。


あの恐ろしく汚い部屋に誰かを入れてはいけない...




そう思い、走ってマンションのエントランスに。





「菅さん!」

後ろから私を呼び止めた。



「ん?なに?」




"あの...ですね"と顔を真っ赤にしながら言う加賀君。


何?って思ったけど、私が渡した1万円札を見ながら私に話しかけている姿に"ピン"と来た。




「お金はいいから。おつりは貰っていいよ、送ってもらったお礼で」



「いや...」




そんな加賀君の声は軽く流し、私は手を振りながらマンションの中に入る。