赤い白ワイン

私は胸の内に冷たい不安感を抱いたが、ここは平然を装って彼に私の弁解、四日前のことを説明した。

私が話している間、彼は相槌一つ、返答一つすることなく。
また、顔色すら変えずに私の顔を、碧眼の海底を凝視していた。

そんな彼は私が話を終えると何を今まで考えてたのか、怒っているのか笑っているのか、その中間のような妙な表情を口許だけに浮かべて軽く鼻を鳴らした。

「はあ。兎に角そういう事情からお前さんは俺の部屋にいるって訳だ。
理解しろと言っている訳ではない。分かって貰えれば、それで結構だ。
―――ところで念のために訊いておくが、お前さんの名前は?」

私は一応ながら青年に名前を訊ねる。
職業病という訳ではない。
すぐに出て行くだろう相手だが、名前を呼ぶに不便だからだ。
いつまでも「お前さん」って呼ぶ訳にもいかないだろうからな。