結局三村先輩はトップでゴール。2位以下は大きく突き放して。
と言うか、これなら予選2組や3組レベルじゃないのか?
「やっぱトップか。よかったよかった」
兄北田はそう言って喜んでいる。
予選1組目だとかは関係なく、とりあえずトップという称号は手にしたんだし。
気分的に2組目で最下位、よりも1組目でトップ、の方が上な気がするし。
「よーし。俺らも頑張るか。行くぞ!」
まだ女子1組目が終わっただけで、俺らの出番はまだまだ先です。
泳ぎ終わった女子メンバーを迎える為に、通路の方へ行くが……何か寺尾が俺のこと避けてるような……。
「寺尾さん、すごく怒ってたみたいだけど、何かあったの?」
「村山。教えてくれるのは有り難いが、そういう情報はもっと早く教えてくれ」
言われなくても予測できた事だから、特に問題は無いが。
しかし、村山まで気付くくらいに怒ってるなら、ここできちんと説明しないとな。
「寺尾、ちょっといい?」
俺が話しかけても、何かよそよそしい反応をしてるし。
「まあいいからさ。ちょっとこっち来て」
俺の出番までまだ30分はあるだろうし、それだけあれば説明も出来るだろう。
寺尾の手をつかんで強引に人目の無いところへ移動する。
後ろからは先輩達の冷やかしの声が聞こえるが気にしない、気にしたら負けだ。
「何よ!」
膨れっ面で聞いてくる寺尾だが、こちとらやましいことは……多分、無い。はず。
「あのさ、さっきの大塚の件だけど」
名前を聞いただけで、寺尾の機嫌がより悪くなっているのが分かる。
「別に私には関係ないからいいもん!」
「関係無いって、それはひどくね?」
「だって、浅野君と純子ちゃんが何してても関係無いもん!」
寺尾はそう言ってほっぺたを膨らませるが……抓りたくなるくらいに可愛いな。
今はそういう時じゃなかった。
「とりあえずはきちんと話を聞いてくれ。怒るのはそれからでもいいから」
ホントは怒らせなくなんかないけど。
