ブルー・フィールド

 
 とりあえずプールサイドに上が……ろうとしたけど、腕力が。

 いつもなら飛び込み台の横から上がるんだが、サイド面のタラップへ。

 格好悪いよな、ここから上がるのって。

 次の組の選手紹介が始まったので、慌てて隠れるようにスタンドのひさしの下へ移動。

 そういえば、タイムは? さっき一緒に見ればよかったが忘れてた。

 もう消えてるか。

 なら陣地に戻ってから、あーちゃんに聞こう。

 次の組がスタートした後、陣地へ戻り始めた。


 スタンド内部の通路を歩いていると

「おーい、浅野じゃないか」

と声を掛けられた。

 この声は……聞こえない振りだな。

 無視してすたすた歩いていると

「おい! 浅野!」

 声の主は声を荒げ、足早に近付くと肩を捕む。

「何だよ。無視すんなよ」

 声の主は大河原俊二。

 中学時代、何かといがみ合った相手、だ。

「おお、大河原か。まさか俺の事を呼んでるとは思わなかったんでな」

 お前は俺の事嫌ってただろ?

「何だよ。久々に会ったってのに」

 俺はお前と会っても嬉しくないどころか、星占いの大凶をタロットで引き当てた上に六星占術で画数が悪いと言われるよりも最悪だ。

「ところで、お前なんで1500とかやってんの?」

 俺の不機嫌丸出しの顔を見ても飄々と質問をしてくる。

「別に。出場枠が無かったからな」

「へえ。でもお前って羽鳥高校だろ? あそこそんなにいい選手いたっけ?」

 初めて校名が出るのが大河原の口からとは……転校したくなる。

「そりゃ市立商業と比べれば、普通のクラスだけどな」

 こっちは楽しくやる部活だからそれで良いんだよ。

「そんなんで楽しいのか?」

「タイム競うだけが水泳じゃないって事だ」

 エリート選手に言っても馬の耳に念仏。釈迦に説法。孫悟空に下ネタだな。

「そっか。まあ頑張れよ」

 そう言って大河原はふらふらっと立ち去る。

 さっさと行け。疲れてる時にお前の相手なんかしたくないからな。