ブルー・フィールド

 
「そろそろ由美ちゃんの番だね」

 妹北田がにやにやしながら寄って来る。にやけ具合が気色悪い。

「そう言えば寺尾は何組?」

 さっきは自分の事で落ち込んでて見てなかったが。

「由美ちゃんは11組目。一年生でここにくるのは凄いよね」

 確かに。同じく100にエントリーしている立花先輩は9組目。三年生より後のレースというのは普通に凄い。

 中学時代だと後輩に負けた先輩が辛く当たったりとかしてたんだけど、ここではそんな事もないし。


 陣地はスタンドの上の方でも、自校の選手が出場するレースならば最前列まで行き応援をする。

 男子フリーの時は落ち込んでて応援してなかったのは内緒。

 まず、立花先輩はベストタイムは出ないものの平均タイムで無事ゴール。

「立花先輩は100mは今回最後だったのに、残念だね」

「どういうこと?」

「ほら、由美ちゃんがいるから、先輩達は100と200を振り分けて出るじゃない。で、立花先輩の出れる100は今回が最後。市大会は三村先輩。地区大会は飯島先輩って順番」

 ほう、それはローテーションがうまいことで。

 男子にはそのローテーションを組んでもらえないのは、多分、嫌がらせだな。

 なんてね。ちょっと拗ねた考えなんぞしてみる。

「あ、由美ちゃん出てきたよ。ガンバレー!」

 ふむ、遠目には緊張してる様子もないし、大丈夫っぽいな。

「ほら! 浅野君も声出して!」

 あーちゃんに怒鳴られて

「ガンバレー!!」

と叫んでみるが、普通にこの歓声の中では聞こえないよな。


『位置について……』

 スターターが電子銃を持った右手を上げる。

『ヨーイ』

 この時だけは、一瞬だが応援団も静まり返る。まるでゴルフのショットの時みたいだ。

『パーン!!』

 電子音が鳴り響く。

 各コース、一斉にスタート。

 フライングも無い、きれいなスタート。

 さすがここぐらいの組になればフライングなんて、たまにしか無い。