県内には86の高校があり、その内、水泳部があるのは55校。
31校の生徒は、プールの無い、地獄の夏をおくっているんだろう。
どんな水泳部でも、フリーやブレストといった、一般生徒でも泳げる種目は、きちんとエントリーしてきている。
100mや200mならなおさら。
つまりフリーの100mには55×2=110人が参加してくる。
1レース同時に8人だから14レース(8人で割り切れない場合、一番最初のレースが6人とかになる)行われる。
1レースにかかる所要時間は、最初の方(エントリータイムの遅い選手)でも3分程度、最後の方なら2分程度、かな。
100mフリーの男女が終わるころには、競技開始から1時間半以上が経過していたりする。
「今年の男子も市立商業が圧倒的だな」
決勝に進むのは、予選の上位タイムの8人だが、市立商業はエントリーした2人とも決勝進出。
しかも予選タイム3位を1秒以上離しての1位と2位。
選手層の厚い100mフリーでこれでは、他の種目はどうなることやら。
「まあ、あそこはあそこ、うちはうち、よ。ね?」
大畠先輩がそう言って笑い、他の先輩も頷く。
タイムは良ければ越したことは無いが、あくまでも水泳を楽しむのが基本。
それが我が校の良さだと思う。
「さーて。そろそろ女子が始まるか。応援しなきゃな」
と立ち上がり、前に移動をする。
「ちゃんと男子も応援しなきゃダメだよ」
なんだい? 予選3組で8位だった村山君?
「そんな言い方しないでよ……」
あ、やっぱりいじけた。
『バシーン!!×2!!』
「村山君をいじめないでもらえるかな?」
「そう言う浅野君はどんなタイム出してくるのかな?」
瀬戸先輩とあーちゃんが並ぶと最強……最凶だな。
