ブルー・フィールド

 
 それよりもプログラムを、と開いてみる。

 一番最初に競技順序が記載されているが。

 今日は初日だから各競技100mだな。順番は最初は男子フリーから。

 次が女子フリーで、男女順にバック、ブレスト、バッタ……フリーの1500……?

「ちょっと! 何これ! バッタの次がフリーの1500って!! ってか何! 1500って? 800じゃないのか?」

 慌て怒る俺とは対照的に、あーちゃんがのほほ〜んと答える。

「ごめんね。どうも男女勘違いしてたみたいでさ。男子の長距離は400と1500だったんだよね」

 おいおいおい!

 いきなり1500とか無理だろ!

「てか、エントリータイム書いたのに、何で間違えるよ!」

 普通に有り得ないだろうが!

「あ、そこに気付いたんだ。実はねえ……」

 あーちゃんの視線が先生に向けられる。

「ホントはフリーの400にする予定だったんだけど、打ち合わせに来なかったからさ」

「そんな……だからって1500を800とか、言わなくてもいいでしょ、先生!」

「それはあれよ。何だっけ? そうそう、サプライズって事で」

 そんなサプライズ要るか!

「とりあえず完泳してくればいいから」

 そんな無茶苦茶な……。


 落ち込む俺とは関係なく、競技が順に始まっていく。

 今は男子フリーの100mをやっているが、当然俺は皆の応援、などという心境ではなく、膝を抱えての落ち込みポーズ。

「浅野君、そんなに暗くならないでよ」

 寺尾が慰めてくれるが

「寺尾もエントリーが1500だって知ってたんだよな?」

 打ち合わせに出てたんだから、知っていただろう。

「それがね、私も800って聞いてたから、びっくりしちゃって」

 そう言っている寺尾の顔に、嘘はなさそうだ。

 よくよく考えればそうか。

 寺尾は性格的に、嘘を突き通す事はできないだろうし。

 多分、先生やあーちゃんがそこまで読んで、寺尾には800と言っていたんだろう。