「誰も居ないんだから言っちゃいなよ」

 あーちゃん、しつこいよ。完全に楽しんでるな。

「よし。それなら……」

 わざと区切って、一旦深呼吸。

 二人は興味津々、って顔だ。

「クイズだ。当ててみなよ」

「え〜ズルイよ〜」

「男らしくないなあ」

 二人して文句を言ってくるが、知るか!

 こうなったら意地でも言わないからな。

「じゃあ、私が当ててあげるよ」

 あーちゃん? 何か?

「え〜あーちゃん解るの? 探偵さんみたい」

 いや『見た目は子供、頭脳は大人』ならまだしも『家政婦は見た』っぽいんだが。

 って言ってる場合じゃない。

「浅野君、墓穴を掘ったわね」

 してやったり、と不敵に笑うあーちゃんだが。

「いや、この小説は18禁でもなければBLでもないからケツは掘らない」

「意味ちがーう!」

 このやり取りを一瞬遅れて理解した寺尾は、恥ずかしげに頬を紅く染めた。

 バカを言って話の流れが変わるかと期待したが

「なら言ってあげるね」

とあくまでもこの話を進めたがるあーちゃん。

 どうする? このまま聞き続けるか?

「浅野君のタイプは……」

 早く次の手を打たなければ。

『間もなく終点の〜〜』

 おお! 車掌さん! 何てグッドタイミング。

「残念! もう駅だし、この話は後日だな」

 意気揚々と言う俺にあーちゃんは、え〜、とか言ってるみたいだが、こうなりゃ知るもんか。

「私も聞きたかったなぁ」

 寺尾はどういうつもりなんだ? わざとじゃないならかなり天然なのか?

「まあ仕方ないね。途中までだとなんかあれだし」

 あれってどれだろ? まあ便利な日本語ってくらいか。

 何とかやり過ごして駅に到着。

 俺はこのまま駅から自転車で、二人は折り返しの普通電車に乗り換える。

「じゃあ明日な」

「うん。じゃあ明日、モーニングコールしてあげるね」

 ああ、そういえばそこから話が脱線したんだったな。

「じゃあ期待して待ってるからな」

 そうして電車に乗る寺尾達を見送り、俺も家に帰った。