「それでミーティングの内容は?」
弁当をつつきながら軽く話を切り出した。
「うん、今度の県予選の出場種目についての打ち合わせだったよ」
そういえば、申し込み期限は今日だったな。
「で? まあバッタ、バックはいいとして、それ以外は?」
各種目、同一校からは学年関係無く二人しかエントリーできない。
当然、選手層の厚いフリーとブレストは先輩重視になるんだが。
中学時代はそれであーだこーだと揉め事も多かった。
三年生でもベストタイムの遅い選手が出るのはおかしい、だとか。
仲の良い後輩を出場させたがる三年生がいたりとか。
俺はその辺には関与したくなかったが、立場上、巻き込まれたりもした。
嫌な思い出だ。
「それでね……」
ん? 寺尾がちょっと言い難いのか、口を止めた。
っても飯は続けて食ってるけど。
「何? 俺はフリーでしょ?」
先輩の中でフリー選手は兄北田のみだし。
「ほら、村山君がいるじゃない?」
「村山ってフリー選手だっけ?」
「ちょっと! いつも一緒のコースで泳いでるし! わざと? いじめ? ね?」
あれ? 村山のキャラが変わってないか?
「先生がね、どうせ浅野君にはメドレーでバッタやってもらうからって……」
どうせ……だと?
「けど、初めてだし、バッタは100mだけでいいって」
「という事は、リレーは?」
「北田先輩がやってくれるって」
優しさというには微妙だな。
「で、個人はバッタの100mと?」
一選手二種目は出ることになるのが通例だが。
「でね、北田先輩と村山君がフリーの100と200にそれぞれ出るから、浅野君は800mにって……」
「はあ? 800って?」
思わず怒鳴ってしまう。
「だって〜先生がそう言うんだもん!」
う! 不貞腐れた顔も可愛いじゃないか。
じゃなくて。
ここで寺尾を責めても意味は無いもんな。
「わかった。しょうがないよな」
とは言うものの、800mフリーとか、マジですか?
