「しかし先輩達は、よく平気ですね」

 みんな最初に入った時は寒い寒い言いながら、今は平気な顔をしている。

「まあ瀬戸とかはひかし……」

「北田君? 殺して欲しい?」

 ははは……ボキボキ指関節鳴らすと本気で殺しそうですね。

「ほら! 浅野が遅いから!」

「ちょ! 先輩! 俺だけっすか? 寺尾は?」

「ばーろー。女性には優しく、だろ」

 ついさっき瀬戸先輩の皮下脂肪が厚いとか言ってたのに。

「へえ? 北田君は最後まで言ってないのに良く分かったわね?」

「え? いやその……」

 迂闊な事言えない、恐すぎて。


「はい! それじゃあ皆軽く50からね」

 マネージャーの大畠先輩の掛け声で、皆が泳ぎ始めた。

 冷たさに慣れた体だが、水が動くとまた冷たさを感じる。

「とりあえずいくか」

 コースは9コースまであるが、両端は練習では使わない。

 1コースに2人で割り当てされ、俺は村山と一緒のコースに。

 一応、同じ一年生で、同じフリー選手だから、なんだが。

「浅野君の方が早いから、先にいっていいよ」

「だな。市大会予選敗退の村山君」

「そんな意地悪な言い方しなくても……」

 村山のいじける姿を見ていると気分がいい。って性格ねじれてきたか?俺。

「んじゃお先」

 去年の9月に体育の水泳で泳いで以来、久しぶりに泳ぎます。

 果たして!

 以下衝撃の次号に続く!!

 訳はないが。

 水は冷たいが、やっぱり泳ぐのは気持ち良い。

 久しぶりながらも泳ぎを忘れる訳も無く、すいすい進む。

 25mクイックターン。ん、快調なターン。

 50mくらいなら、久しぶりでも余裕で到着。

 さて、と。後続の村山はどうかな? あれ? いない?

「村山は脚が攣ってもう上がったぞ」

 朝倉先輩の指差す方には、鷲見先輩に介護を受ける村山の姿があった。