食事中、寺尾やあーちゃんは神戸と情報交換をしている。

 あっちのあれはあーだとか、こっちのこれはこーだとか。

 神戸と同じ班の男子、鈴木と馬場が話し掛けてきた。

「なあ、浅野。そっちはどうだ?」

「ん? まあ楽しく回っている、よな?」

「うん。いろいろ見てて飽きないよね」

 村山の返事はどこかピントがズレていないか?

「俺達も寺尾や岬と一緒ならなあ」

 鈴木め。寺尾は譲れないぞ。しかし、あーちゃんもか?

「クラス一のロリ眼鏡とクラス一のロリ巨乳だぜ。お前らがうらやましいよ」

 馬場の番付は、危ない方面に偏っている模様です。

「もしかして、寺尾やあーちゃんは人気あるのか?」

 別に俺がクラスで浮いてる訳じゃないが、まだあまり女の子の話しまではしていないだけだ。

「ああ。ただ、浅野と村山が独占してるから、皆諦めモードだけどな」

「いや、独占した覚えはないが」

 そもそも村山は違う相手がいるんだが、それはこの際黙っておくか。

「だいたいこの時期に、女の子を呼び捨てたり、あだ名で呼べるんだからな。なんかあると思うだろ」

 そう言われればそうだが、なんか『さんくん付け』ってよそよそしいから苦手なだけなんだけど。



 そうして昼メシを終わり、午後から2時間ほど散策をしてオリエンテーリングは終了。

「楽しかったね」

 寺尾が笑顔で言ってくるが、昼間の鈴木達の言葉がどうも気になる。

 ので、帰りのバスであーちゃんと村山に頼んで、寺尾の隣に座らせてもらった。

「どうしたの?」

 俺が隣にきたから、寺尾は不思議がるが、嫌がる様子でもない。

「ちょっと寺尾に聞いておきたいんだが、いいか?」

 寺尾は何を聞かれるのか分からないのであろう、少し身構えている。

「大した事じゃないんだが、もしかして、俺が寺尾と呼び捨てにするのは気に入らないか?」

 その質問を聞いた途端、寺尾は「いまさら?」的な目で見てきた。

「あらたまるから何かと思ってたのに。そんなの気にしてないよ」