自然散策とは言い得て妙で。
要は山の中を散歩すれば良いだけの話。
「浅野君はこういったの、あんまり好きじゃないの?」
「俺は山より海派だからな。寺尾は?」
「私はどっちも好きだよ。自然って良い感じじゃない?」
そう言いながら、ワクワク感が止まらない様子が、いかにも子供っぽいが、言うのは止めておく。
まあこの時期になれば、山にも色んな花も咲いているし、目が飽きる事はない。
「ちなみにこの山には熊や猪はいないからね。襲われる由美を庇って点数稼ごう、としても無理よ」
あーちゃん? そんな想像すらしてませんでしが?
というか、そんなベタな展開、どこかのラブコメマンガじゃないんだから。
「でも、鹿はいるらしいから、出会えるとラッキーだよ」
「鹿さんかあ。可愛いよね」
動物をさん付けするのって、女の子か子供特有だよな。
「しかしあーちゃんを見たら、鹿が逃げ出しそうだが」
無論、性的な意味では無く、食的な意味で。
「失礼ね! 生では食べないわよ!」
生では、って、あんた。
たしかに美味しいらしいが、何となく牛や豚より残酷っぽく聞こえるのは何故だろ。
そんな会話をしながらも、ぶらぶらと散歩を続ける。
ハチミツ園でハチミツを食したり、馬小屋でエサをあげたり。
花園では、寺尾はもとより、あのあーちゃんまでもが、純情可憐乙女模様しているし。
村山は村山で、体力回復の為か、その辺に生えている雑草を『薬草』とか言って食べはじめるし。
「そんな事してないから!」
「何故しない? してくれないと、オチがつかないんだが」
「そんな体張ったギャグはやらないから!」
ネタを選ぶようでは、まだまだ二流芸人にはなれないな。
ある程度見て回り、小休止をしよう、としたところで、昼メシの時間がきた。
「ところで、弁当はどうなっているんだ?」
4人とも瀬戸先輩の家から登校しているから、弁当など持って来ていない。
「たしか……お弁当、持参、だったような……」
マジか?
