バカな話に効果か、由美の顔がいつもの可愛い笑顔が戻った。
「それではそろそろ陣地に戻ろうか。先輩達も心配していたからな」
「うん。ごめんね、心配かけて」
こうやって素直に謝る姿は、やっぱり可愛いな。
「で? 私達のレースは見ないで、イチャイチャしてたってわけ?」
「あ! 部長に瀬戸先輩……」
……何回目だ? このフリ。
陣地に戻ると、皆が由美に近寄ってくる。
「寺尾さん、やったじゃない!」
藤木先生が、単にベストを出しただけではない褒め方をしている。
「由美〜、あんたって子は、凄いじゃない!」
あーちゃんもさっきより喜んでいる。
「どうしたんだ?」
喜びの輪から少し離れ、村山に事情を聞いてみる。
「あの、寺尾さん、決勝に出れるんだよ」
なに!
「しかし、寺尾は2位だろ。たしかにタイム差は無かったが」
「うん、タイムもそうなんだけど、4組からフライング失格も出たから」
つまりは繰り上げ決勝進出か。
皆の喜びも一段落し、由美が隣にやって来たが、あまり喜んでいないか?
「どうした? 決勝出れるのに、何か浮かない顔だぞ」
「うん。だって、決勝って言っても、繰り上げなんだもん」
そりゃ、ストレートな決勝進出じゃないが。
「だが、それは勘違いだな」
「勘違い? 意味分かんないよ?」
今の言い方で分かれば、勘違いしないからな。
「そもそも繰り上げじゃないんだから。棄権なら繰り上げだろうが、失格というのは、ルール違反なんだから、記録が成立していないんだから」
「何か難しくて良く分かんないよ〜」
そうか?
「要するに、気にせず頑張れ、という事だ」
「……もしかして、説明、諦めた?」
バレたか。
