200mフリー女子中学生の部が終了する頃、由美がトコトコっと隣へやってきた。
「どうだ? 少しは休めたか?」
小一時間程度経過したか、この後の高校生男子の時間で身体を起こさせ、自分のレースに備えなくてはならない。
「ん、大丈夫。もう平気だよ」
寝起きがいいんだろうか、声にはハリがあるように感じる。
「それならいいが、無茶はするなよ」
と言っても、頑張るんだろうな。
「心配しすぎだよ。大丈夫だって」
そう話をしていると、呼び出しアナウンスが流れた。
「じゃあ行ってくるね。ちゃんと応援しててよ?」
「ああ、するなと言われてもするから。安心しろ」
「そこは頑張ってって言うとこじゃないの?」
そう言ってもらいたいんだろうが、頑張ると言う事は無理する事にも繋がるから、あまり言いたくない。
「ん、ならちょっと耳を貸してみなさい」
こういう時にまあ一番ラブコメするんならこれだろ。
「なあに?」
近づけた由美の耳元にそっと囁く。
「ちゃんと泳いできたらチューしてあげるな」
途端に由美の顔が紅くなる。実に分かりやすい。
「ばっ! ばか! そんなのいらないもん!」
そう言うとパタパタっと小走りにレースへと向かった。
「浅野君、何言ったの?」
あーちゃん? もしかしてのぞき見ですか? あまりいい趣味ではないですよ。
「ん、まあ良くある言葉だ。気にする事もあるまい」
「何か怪しいわね。どうせろくでもないこと考えてるんでしょ?」
別に付き合ってるんなら、ろくでもないことではないと思う。
今言うべき事かどうかは別として。
