ベンチに座ってまずは俺から口を開いた。
「それにしても、中学時代って、いろいろあったんだな」
雑談から入るのは、まあ照れ隠しもあるが、時間を稼ぐ意味もある。
「私が転校しちゃった後も大変だったんだね」
「ああ。しかし、藤岡先輩はよく俺を覚えていたよな」
たしかに印象深い後輩ではあったんだろうが。
「それとは反対に、浅野君はなんでそんなに物覚えが悪いんだろうね?」
寺尾がちょっと不貞腐れ気味に言う。
「私の事も忘れてたし」
うっ! 痛いところを突いてくる。
「でもな、安心しろ。言われてちゃんと思い出したじゃないか」
記憶に無いのではなく、引っ張り出すのに手順がややこしいだけだ。
「でもね、私は直ぐに分かったもん!」
……拗ね方がまた可愛いんだよな。だから余計に意地悪したくなるというか。
って小学生か、俺は。
「それに付いては申し訳なく思う。すまん」
ぺこりと頭を下げる。
「いいよ。この3ヶ月で浅野君はそういう人だって分かったから」
あんまり良い印象では無い気もするんだが。
「それはいいとして、一つ気になっていることがあるんだが」
これだけは確かめておかなければ、その先の話はできない。
「ん? 何? 体重以外なら答えるよ」
おお! 寺尾にそんなボケができるとは。
「ではスリーさい……」
ボケ返したら睨まれた……。
「すまん、調子に乗り過ぎた」
まあ寺尾から始まったんだが、何となく謝らなければならないのは、多分俺のいつもがボケすぎてるからだろう。