公園。
昼間は子供たちが無邪気に遊びまわり、その母親たちは井戸端会議で親睦を深める。
夕方からは、場所無しアシ無し金無しの3無いカップルが愛を語らいに来る。
決して愛を確かめる行為をする場所ではない。
と思う、けど。
そんな規模の公園が駅前には二つあり、そのうちの一つに辿り着いた。
が、しかし。
周りからけしかけられてこういった流れになるのは、かなり本意ではない。
一応これでも何となくだが、イメトレを繰り返してきたのに。
「浅野君?」
公園の入口で立ち止まる俺を不審に思ったのか、寺尾は下から覗き込むように俺の顔を見る。
「ああ。分かってる」
一度やると決めた以上、途中で止めるのは男らしくない。
周りに乗せられたとはいえ、最終的には自分が決めたんだ。
何より当の寺尾が望んでいるんだし、それに応えるだけの気持ちもある。
「ちょっとこの公園はいい感じなんだが。来たことはあるか?」
自宅が遠い寺尾が来たことあるとは考えにくいが。
「ううん、初めてだけど。いい感じなんだ?」
よし。とりあえず第一関門は突破。
「では中へ行こう。この時間ならまだちょっと早いが、直ぐに良くなるはずだ」
時間は未だ7時を過ぎたところ。
真夏の7時といえば、まだ日の入りも終えていない時間。
これから徐々に空も暗くなり、いい感じになるはず。
「うん。いいけど」
寺尾としてはあまりじらされたくないのか、あまりはっきりしない返事だ。
「まあ向こうにベンチもあるし、ゆっくりしよう」
嫌がっているのでなければ、とりあえずは連れて行け。
寺尾の手を握り、先導するように歩く。
「……浅野君……」
いきなり手を握られて恥ずかしいのか、いや、恥ずかしいよな、うん。
そうして公園中央にある噴水広場のベンチに座る。
この後を期待しているのであろう、同じ様なカップルの姿がいくつかあるが、同じ目的ならばこちらに干渉することもあるまい。