ブルー・フィールド

 
 45mラインが見えてきた。

 クイックターン、あれ、ちょっとタイミング狂ったか?

 少しクイックに入るタイミングが遅かったようで、身体を反転させた後、タッチ板に足がつくまでの間が短い。

 ええい、こんな時にミスをするとは。

 若さ故の過ちだとしてもそれは認めなくてはならないだろう。

 しかし、この程度であれば、今日の俺の調子なら、十分取り返してお釣りが来る。

 後半の50mに入ったが、今のところまだ疲労も出ていない。

 ターンの時に確認した範囲では、1と3コースは十分引き離しているし、5、6、7コースも十分とまではいかないが引き離した。

 あとはほぼ同位置で競っている4コース。

 しかし、こいつなかなかやるな。

 ならばみせてやろう。コースの差がスピードの決定的な差でないと言う事を!

 と、まあ赤い想像を膨らませるが、3倍のスピードは出ないが。

 なかなか4コースも速く、そのままほぼ同時に75mラインを通過。

 こうなったらここからスパートを仕掛けるか?今日の調子なら余裕だろう。

 基本的にスパートはノーブレス泳法。

 他のコースを確認できないから、他のコースがスパートを掛けたりすると結構大変な事になるんだが、見えないんだから、知ったこっちゃない。

 それにこちらもスパートを掛けているんだら、そうそう抜かれるもんでもない。

 という事で、飛天でははいが奥義・ノーブレ泳法発進!

 ノーブレの場合、他のコースも見えないが、プールサイドも見えない。

 自分の位置がどこなのか、はっきり分からないのが難点だが。

 唯一分かる、ラスト5mライン通過。

 やはり今日はスタミナがばっちりなんだろう。25mノーブレでも、きついには違いないがあの世との境を見なくて済む。

 と前も見えない状態で泳ぐもんだから、タッチのタイミングが悪く、手首でタッチしてしまった。

「ぶはぁー!」

 泳ぎ切ったと言ってもやはりノーブレはきつい。

 やらなくて済むならやりたくないが、生憎そこまでの速さがないから仕方ないか。