男子400mフリーリレーには、20校中15校がエントリーしている。
最近思ったんだが、うちの学校、実は弱小じゃないんじゃないか?
部員数こそ少ないものの、そこそこのタイムは出すし、リレーにもちゃんと参加する。
「それはここ藤木先生がきてからの事だからな」
兄北田が柔軟をしながら教えてくれる。
「今年の三年生は男子がいないだろ? その前までは女子もメドレーに出れなかったらしいしな」
今は専門は揃っていないにしろ、リレーはフリーもメドレーもきちんと出ている。
タイムは芳しくないが、途中棄権もないし、最下位でもない。
「先生は熱血指導だからな。その辺はちゃんとやるさ」
たしかにそうですね。
「で、北田先輩も慣れないバッタをやらされた、と」
「まあ今年からは浅野がやるけどな」
くっ! 上手くふったつもりがあっさりかわされた。
「まあええやん。浅野は浅野でがんばりや。なあ?」
井上先輩もブレストなのに、フリーリレーをやらされてるんだった。
「まあ、頑張りますか」
今回のフリーリレーも第一泳者は俺。第二泳者は前回と変わって井上先輩、次に村山、アンカーが兄北田。
俺のフリーの記録はリレーで作れ、という事らしい。
しかしアンカーもプレッシャーだが、第一泳者もプレッシャーだな。
そう言えば中学時代は二年の時は第二、第三泳者で、三年になってアンカーになった。
第一泳者で泳いだ記憶が無い。
「それを今頃思い出すって、浅野君らしいね」
無駄口を叩く村山を軽く叩く。
「痛いよ! 暴力反対!」
「安心しろ。身体の痛みなんてのは、精神が肉体を凌駕すれば感じなくなる」
「それってどんな剣客マンガなの! 僕は神経とか浮き出てこないから!」
村山にしては気の利いた返しをしてくるな。
「残念ながら村山では虎の剣は使えまい。なんせ瀬戸先輩のペットだからな。せいぜい野良猫といったところか」
「ペットなのに野良ってのが意味わかんないけど」
気にするな。高級な猫の名前が出てこなかっただけの話だ。
