「じゃあ自己紹介も終わった事だし、まずは軽くランニングから始めようか」
藤木先生の指示で校庭ランニングに行くことになるが。
「村山はいいとして、高橋は大丈夫か?」
見た目貧弱な高橋に聞いてみる。
「うん、多分、大丈夫だよ」
言い方からしてもはやダウンしているようにしか見えないんだが。
「浅野君はやっぱり走るのも早いの?」
村山の言うやっぱりの意味は分からないが
「ま、長距離なら慣れてる分、そこそこだな」
長距離が、というより、短距離が無茶苦茶遅いだけなんだけど、この際黙っておこう。
結局校内マラソンを終えた時、村山も高橋も寺尾に負けているというオチが付いたのは、言うまでも無いことか。
「寺尾は早いんだな。さすがにSS経験者だ」
「浅野君、SSは関係ないから」
くたばりながらもツッコミを入れてくる村山。
とそこへ
「村山くん、受験勉強で体力落ちちゃった?」
と飼い主の瀬戸先輩が近寄ってくる。
「いえ、そんな……大丈夫です……」
恐縮した返事をしながら、よろよろっと立ち上がる村山。
「無理しなくていいのよ。今日だけはね」
「ふむ、瀬戸先輩は優しいんだな」
「そうなのかなぁ? 今日だけはって言うのが逆に怖いんだけど」
寺尾は心配しすぎなんだよ、多分。
「なんだ、男子はだらし無いわね」
藤木先生はそう言いながらため息をついている。
確かに女子の選手3人は平然とは言わないが、倒れ込んではいない。
「浅野君は経験者だけあって大丈夫みたいだけど」
いや、先生、村山も一応経験者っす。
と……ポツン……
「あ、降り出したな」
誰ともなく空を見上げると、雨雲が流れてきている。
「じゃあ予定変更ね」
これくらいの雨で陸トレを中止するのかな?
まあ新入生に対する心遣いだろう。
