「あ〜! ヒロく〜ん。会いに来てくれたのー?」
……ん? 何やらノイズが入るな。この辺は。
「え? 何で?」
寺尾が階段の方を見ながら驚いているが、何か珍しい動物でもいるのかな?
「ああ、大塚さん。お疲れさま」
藤岡先輩。そこはピー音入れないと、放送禁止になっちゃいますが。
「あれ? え、と、寺尾さんも?」
どうやら俺は今大会、あまり良い運に恵まれてないらしい。
「なんで大塚がここに来るんだ?」
「ちょっと! さっき言ったわよね? 私は桜坂に入ったって」
ああ、そう言われればそうか。
「生憎俺のSDカードは容量いっぱいでな。余分な情報は順次消去される仕組みになっている模様だ」
と言いながら、あまりやり取りするのはヤバい事に気が付いた。
横目で寺尾を見ると、やはり機嫌は良くないみたいだ。
「浅野君、大塚さんとも仲良かったの?」
実情を知らない藤岡先輩に、的外れな質問をされる。
「全然誤解です。なあ寺尾」
寺尾にふるのはお台場冒険王だが。
「私はよく知りませんから!」
やっぱり怒りますよね。
「ヒロくんってば。照れない照れない」
俺の言葉を照れ隠しと判断する大塚の思考回路には、かなりのバグがあるんだろう。
「あれ? もしかして、大塚をスカウトしに来てたのって」
「あら、浅野君、気付いてなかったの? 去年の市大会で、大塚さんには話ししたのよ」
どこかで見た事ある人だと思ってたが、そうなんだ。
「え〜。私にはスカウト無かったですよ」
寺尾がつまはじきにされたのを怒る様に、藤岡先輩に問いただすが。
「ごめんなさいね。ほら、私達は母校の後輩しか声掛けれないから」
北中から転校し、SSへ行っていた寺尾だから、会う機会も少ないしな。
「そもそも寺尾さんは決勝にもいなかったけど? スカウトはされないんじゃない?」
優越感に浸るような、大塚の口ぶりに、寺尾は明らかに怒りながら、事実だけに反論できない。
が。
「大塚!! 俺がその手の話しは大嫌いだと知ってて言ってるんだな!」
思わず怒鳴っていた。
