スタンドの中央階段の辺りに差し掛かり、寺尾が足を止めた。
「さくら先輩!」
階段の方を見ると、レースから帰って来た藤岡先輩の姿を見つけた。
「あ、寺尾さん。見ててくれた?」
そう言う藤岡先輩の表情は、十分に力を発揮出来たのだろう、やり切った満足感が溢れている。
「あれ? 浅野君……だよね?」
藤岡先輩は俺の事を覚えているのか? 確認がてらに声を掛けてきた。
「はい、どうもお久しぶりです。それと、入賞、おめでとうございます」
と挨拶をするものの、ホントに覚えているのかは、半信半疑。
とりたてて会話をした記憶はないし。
「ありがとうね。それよりも、二人とも、仲良くやっているようね」
まあ一緒に来るんだから、仲が悪くは見えないだろうが、いきなりそこ?
「い、いえ! まだその、違うんです!」
と寺尾は、何か大慌てで否定しているが。否定する必要は無いだろ。
「そうなの? まったく。変わらないわね」
藤岡先輩は微笑ましい後輩を見つめる様な視線だ。
「でも先輩、よく俺の事、覚えてましたね」
「それはそうよ。寺尾さんと浅野君なんだから」
ん? 俺と寺尾?
「なん……」
「さくら先輩! 内緒ですよ〜」
俺の言葉をぶった切りで、またまた寺尾が大声でわめき立てる。
「なあ、さっきから気になるんだが、何かあったのか?」
どうもさっきから、寺尾の言動が不自然なんだが。
「あ、さくら先輩、さっきの話しなんですけど」
え〜どうやら俺の疑問は、華麗さは一欠けらもなくスルーされる模様ですが。
「浅野君も来れるのかな?」
何処へ?
「今日の帰りに、さくら先輩とお話してこうよ」
「ああ。別にかまわないが」
「私がよく行く喫茶店が駅前にあるのよ。そこでどう?」
こんな綺麗な先輩の行きつけの喫茶店、さぞかしセレブチックなんだろうが。
ジャージで行くのか?
