ターン後の潜水から浮上。ん、少し長く潜水したか?
ターンの時のキックの力を生かすためには、潜水はある程度必要だが、長すぎれば逆にタイムロスになるが。
ターンの前に藤岡先輩の直ぐ前をいっていた2コースとは、ここでも少し差が開いたか。
「やっぱり無理かなぁ?」
寺尾は残念そうに、小さく呟く。
「でも、まだここからの逆転もありえるさ」
根拠はないが、そう言わずにはいられない。
寺尾がこれだけ真剣に見つめてるんだから、淡々と答えるのは男としてどうよって感じで。
寺尾の言うとおり、藤岡先輩は先行逃げ切りタイプらしく、先頭集団とは徐々に差が開き始めた。
それでも、隣の2コースと8コースの2人が、徐々にペースが落ちてきた、かな?
「8コースは予選4組の4コースだよな?」
「そうだね、予選では勝ってるんだよね」
2人とも、エントリータイムは藤岡先輩より速いものの、8コースは今日のレースで一度負けている。
全国やオリンピックなどでは、決勝用の力を温存して予選を泳ぐ選手はいるが、市大会ではいないはず。
「せめてあの2人のどっちかには、勝てるといいな」
片方に勝ったところで順位は7位だから入賞ではないんだが。
入賞する為には、この2人ともに勝たねばならない。
「大丈夫だよね。さくら先輩なら」
寺尾が俺に同意を求めてくる。
「ん、このまま追い上げれれば、何とか追いつけるんじゃないかな」
俺の言葉に、やはり、うんうん、と頷く寺尾。
レースの方は75mに差し掛かった。
藤岡先輩と8コースの差は頭一つぐらい、2コースはその少し前、藤岡先輩から見て、身体1/3まで接近している。
「あ〜あと少し、先輩、頑張って!」
夢中になる寺尾。
なんとなく、少しずつ距離が縮まっているように見えるのは、贔屓目ではないと思うが。
