100mバタフライ。
何故クロールや平泳ぎがあるのに、バタフライという疲れる泳法を編み出したのか、理解に苦しむ。
背泳ぎならまだ分かるが。
「そんな事言ってないで、早くレースに行くわよ」
飯島先輩に首根っこを引っつかまれて陣地を後にする。
「浅野君、頑張ってね」
寺尾が応援してくれるが、なかなか闘志は燃え上がらない。
「何? そんなに嫌なの?」
飯島先輩は不機嫌な顔で聞いてくる。
たしかに自分が出る種目を嫌がられれば、良い気分ではないだろうが。
「嫌とかじゃないんですけどね。なんかやる気にはならないというか」
「やる気に、ねえ。私も最初はそうだったけど」
飯島先輩もメドレーリレーでバッタをやるから、フリーの出場枠が無い時にバッタで出ている。
「先輩はどうやってやる気になったんですか?」
「それは数をこなしたからかな」
はて? あまり聞いた事のない理論だな。
「こうやって大会に何回か出る度に、どんどんタイムが縮まるでしょ。フリーもそうだけど、やっぱり、速く泳げる様になれば、それが楽しみになるしね」
たしかに、中学一年の頃、まだ初心者時代はそうだったな。
「それに、女子は私以外バッタ出来ないからね。何か頼られてるとやる気になるでしょ」
飯島先輩は責任感があるんだなあ。
俺も一応一年生のキャプテンらしいから、責任感を持たなきゃいけないんだろうが。
「大丈夫。皆、浅野君に責任感無いのを知ってるから」
……いや、うん。間違いないのは間違いないんだけど。
控えのベンチには、まだ中学生女子が座っているので、脇で中学生男子のレースを見学する。
中学生とはいえ、予選最終組にもなれば、俺より速いのは当たり前。
あ、最終組には北中からもエントリーされてるんだ。
あいつら、頑張ってんだなあ。
さっき島崎に会ったからか、昨日までは気にしていなかった後輩達がちょっと気になる。
後で時間があったら、パンフぐらい見ておくか。
