しばらくして寺尾が陣地に戻ってきた。
先生を始め、先輩達やあーちゃんも、寺尾に近付き褒めている。
寺尾も、満面の笑みのモデルになれるくらいに喜んでいる。
「浅野君はいかなくてもいいの?」
村山が輪に加わらない俺に、不思議そうに聞いてきた。
「ん……何て言うか、一応俺はまだ出番終わってないからな」
というのは完全に不自然な理由だとは分かる。
単純に今行くと、よく頑張った、と頭を撫でそうだからな。
さすがに皆の前でそれをやったら、何を言われるか分かったもんじゃないし。
しばらくして皆も落ち着き、寺尾が隣にやってきた。
「へへぇ、見てくれてた?」
相当嬉しいのだろう、いまだに笑みが止まらない。
「俺が寺尾のレースを見ていない訳がないだろ」
見るなと言われてもガン見するさ。
「なんかね、今日はスッゴく調子良かったんだ」
「やっぱり藤岡先輩効果か?」
俺の応援のおかげ、とは聞けないのは、チキンだからじゃない。
「そうそう! さくら先輩、私の事覚えててくれたよ!」
それは最初分からなかった俺への皮肉、じゃないな。寺尾はそんな事出来るタイプじゃないし。
「だからかな。自己ベストまで出せたし」
「ダメだな。そこは『皆の応援のおかげ』と言うべきだろ。人として」
あくまでも俺の応援のおかげ、と限定しないのもチキンだからじゃないよ。
「あ、そっかぁ。浅野君の応援のおかげだね」
そう言ってさっきより以上の笑顔を見せてくれる。
伊藤部長の言葉じゃないが、押し倒したいくらいに可愛いじゃないか。
「私も浅野君をしっかり応援するから、頑張ってね」
寺尾に藤岡先輩効果があったんなら、俺には寺尾効果があることを期待しよう。
「あの〜お二人さん。そろそろ近藤先輩のバックが始まるんだけど」
……あーちゃんにやってられねー的な目で見られちゃった。
