そんな会話をしながらスタンドに着くが、島崎はまだついて来る。

「北中もこっちか?」

「いえ、反対側ですよ」

「ふむ。ならば歩く方向が違う気がするのは、俺の気のせいか?」

「いやあ、先輩のとこはどんな感じかな? と」

 わざわざ見に来る程の価値は無いと思うが、追い返す理由も見当たらない。

「まあ見に来るのはいいが、幻滅しても責任は自分で取れよ」

 高橋と島崎を引き連れ陣地に着くと

「あれ? 浅野君、誘拐してきたの?」

と島崎を見た大畠先輩が、いきなり意味不明な発言。

「あらあら、可愛い子じゃない?」

 三村先輩の目は少女マンガの様にキラキラしている。

「三村ちゃん、食べちゃダメよ」

 飯島先輩は諭しながらも、本人が一番食い入るように見ている。

「先輩、この人達は……?」

 さすがの島崎もネタで返す余裕がないらしい。

「安心しろ。みんな人畜無害な優しい先輩達だ。俺に対して以外はな」

「何言ってるのよ! 浅野君にも優しいでしょ!」

 皆さん、声を揃えて言いますが、俺は先輩にはいじられっぱなしだと思いますが?

「愛情表現じゃない。あ、それとも寺尾さん以外の愛情は要らなかったかな?」

「飯島先輩! なんでいきなり話がそっちいくんですか!」

 てか、こうやっていじるのが優しさなら、俺はドMになるんだが。

「ハハハ、先輩の学校、おもしろいですね」

 島崎も反応に困りながら、営業スマイルを浮かべる。

「で、実際はどちらさんなの?」

 多分、今いる中の一番の人格者であろう鷲見先輩が尋ねてきた。

「あ、北中時代の後輩で島崎……下の名前何だっけ?」

「先輩? あ、先輩には野郎の名前を覚えるスキルが、まだ無いんでしたっけ?」

「ああ。特にそんなスキルがあっても、利用価値がないからな」

 と、バカをやっていると

「後輩さんなんだ。じゃあまだ中学生なんだね?」

と、こちらはマジモードに切り替わった飯島先輩。

「あ、はい。北中で部長やってます、島崎拓也です」

 雰囲気の違いに気付いたのだろう、島崎は背筋を伸ばして答える