ブルー・フィールド

 
 カウンターで4人分のドリンクとポテト(M)を注文する。

「あーちゃんがMサイズで足りるのかね?」

「な・に・か?」

と睨む様は、さすがに一万年と二千年前から戦ってきた、勇者の迫力を感じさせる。

「それって『愛してる』じゃなかったっけ?」

 さすがにこのフレーズだけなら、妹北田にも分かるらしい。

「違うわよ。浅野君が愛されたいのは、ね〜」

とニヤつくあーちゃん。

「こらぁ! 今はその話をする場面じゃないだろ!」

 何かってーとその話を振るんだから。

 マックのカウンターで愛を叫んだところで、店員さんのスマイルがひきつるだけだ。

「えーと。一万円と二千円分のポテトとコーラでよろしかったですか?」

 ちょっと! お姉さん! 怖いこと言わない!


 注文を終え、ポテトとドリンクを乗せたトレーを持ち、2階席に到着。

「浅野君はアイスコーヒーだったね」

 あーちゃんがテキパキとドリンクを振り分ける。

 仕切り屋だけあって、こういう場面では出来る女の子なんだが、いかんせん、普段が井戸端おばちゃんずだからなあ。

 あ、今は世話焼きおばちゃんか。

「なんでいつもおばちゃん扱いするのかな!」

 コワッ! 怒りでフライドポテトが炭焼きポテトになるかと思った。


 俺がアイスコーヒーを手に取ると

「浅野君っていつもブラックで飲むね」

 脈絡もなく寺尾が言い出した。

「ん、まあ混ぜもんとか嫌いだし」

「ダイエットしてるの?」

 女の子はそっちが気になるんだろうな。

「俺ってダイエットが必要な体型かな?」

 中学の部活引退から高校入学時までに、5kg以上増量したが、それも部活を始めてから戻ったし。

「そんな事ないかな。引き締まってるよ」

 ……言われて何となく気恥ずかしい。

「何照れてんのよ。親父にも褒められた事ない、とか言い出さないでよ」

「あーちゃんなのにガンネタでくるとは予想外だな」

「だって『アメトーク』とかでよくやってるから」

 お笑い好きなくせに、俺のボケには当たりがキツイよな。

「つまんないからじゃない?」

 ……泣いてもいいですか?