翌日、2日目の勉強会へ。
今日の予定は数学と理科だが。
「いまさら言うのもあれだが、俺は人に教えるの下手だぞ」
5人が揃った村山の部屋で、堂々と宣言しておいた。
「確かにいまさらね」
あーちゃんが呆れながら言う。
「でも、理数系得意なのは浅野君だけだよ」
村山は数学の教科書を開きだした。
「大丈夫。浅野君はやればできる子だって先生も言ってたし」
寺尾さん、それは、小中学生向けの言葉ですよ?
「得意科目があるだけましだよ。私は何にもわかんないし」
妹北田は自慢する場所を間違えています。
「まあいい。教えられる範囲は教えよう」
昨日は教えてもらったんだし、お返しはしないとね。
しばらくは各自で問題を解いていたが、まず質問の口火を切ったのが、言わずと知れた妹北田だ。
「ねえ、円周率って3だっけ?」
でたよ、ゆとり教育。
「3で済むのは小泉チルドレンだけだ。小沢チルドレンは3.14を使うべし」
「なにそのチルドレンって。3の方が楽だから3でいいや」
だから、3じゃだめなんだって。
「ところでさあ、浅野君は理科で、どこが得意分野なの?」
黙々とペンを動かしていたあーちゃんが聞いてきた。
「まあ一番説明できるのは、ミノフスキー物理学か」
設定資料集は結構読んでるし。
「それは空想科学読本の話しだよ」
お? 美少女フィギュア系の村山らしからぬツッコミだな。
「だから! この部屋のどこにもフィギュアとかないから!」
ムキになるところがますます怪しいんだが、まあそれはこの際置いておこう。
でないとあーちゃんから放たれる殺気で溺れ死にしそうだ。
「一応は物理だな」
「けど、私達は生物を勉強したいんだけど」
文系には物理や化学よりも、生物の方が実利的らしいが。
「好き嫌いをすると大きくなれないぞ。あ! 寺尾はそれで……」
「それは食べ物の話しでしょ。それにまだ成長期がきてないだけだもん!」
口を尖らせる反論を実生活で見たのは初めてだ。