妹北田を途中の駅で降ろし、残った3人は終点まで。
折り返しの普通電車に乗って、寺尾達の降りる駅に到着した。
普段は通過駅でしかないから、この駅に降りるのは初めてになる。
「成る程、この駅は無人駅なんだな」
それでも駅があるだけましなんだろう。俺の近所には電車が通っていないんだから。
「浅野君は家まで送ってくれるんだよね?」
「ああ。そうだな」
でなきゃわざわざ改札口を出て来ないし。
「そっかぁ。じゃあ、私と由美、どっちから送ってくれるのかな?」
「え? あーちゃん?」
「ちょっと由美は黙っててね」
ん? なんだ? あーちゃんが寺尾を制すが。
まあ多分、いつもの冷やかしみたいなもんだろ。
「そりゃ、まあ、あーちゃんから送るのが、あれでしょ」
わざわざ聞かなくても分かる事だし。
「えっと、浅野く……」
「由美、いいから。じゃあ行きましょ」
さっきからなんだ? あーちゃんが寺尾の言葉を遮るが。
「もう〜、いいの?」
「いいのいいの。ね? 浅野君」
ね、と言われても、何のことなのかさっぱり分からないが。
「まあいいさ。とりあえず行きますか」
そう言ってあーちゃんが寺尾を引っ張り、俺はその後について歩き始めた。
駅からの道中、どうも寺尾は何かを言いたげなんだが。
「どうした?」
「あのね、私とあーちゃんのい……」
「由美。いいからいいから」
「でも〜」
二人のやり取りは先程と変わらない。
「なんだかよく分からんが、とりあえずあーちゃんを送ってから聞こうじゃないか」
こうあーちゃんが遮るでは話しにならない。
「でもそれだと……」
困ったチャンな顔をする寺尾。
「由美、いいから早く帰りましょうよ」
ルンルンなあーちゃん。
俺としてはとりあえずついていくしかない。