「どうしたの?」

 いつの間にやら隣に来ていた寺尾に聞かれた。

「いや、なんでもない」

 さすがに期待ハズレだとか言えない。

「寺尾は顧問は知っていたのか?」

「うん。SSで何度か会った事あるから」

「SS?」

 初耳だな。っていう程いろいろ話をしたわけでもないが。

「うん、中央SS。私、引っ越してからはSS通いだったから」

 たしか、中央中学にも水泳部はあったはずだが、理由はまたいずれ、だな。聞いちゃいけない理由かもしれないし。

「成る程。中学時代は部活じゃなくてSS行っていたのか」

「そうだよ。だから浅野君見つけた時、懐かしくて嬉しかったんだ」

 懐かしくて、という言葉は余分なんだが。

「ということは寺尾も相当泳げるんだな」

「うん、どうだろう? 一応SS内では普通よりちょい上、かな」

 ちょい上であれば一般の部活では相当上扱いになるか。

 部活はあくまで学業の一環、私立校ならまだしも、公立校には専門のコーチとかつかないし。

 そんな話をしていると部長がこちらに寄ってきた。

「君達、入部してくれるんだね」

 近くで見るとスリムな頬に切れ長の目が凛々しく感じる。

 さすがに先輩、って感じで、大人びている。

「一応そのつも……」

「はい! 二人とも入ってくれます!」

 ……あーちゃん、俺に答えさせてくれよ。

 まぁ村山はさっきのやり取りからすれば確定事項なんだろうけど。

「そうか。それじゃあ岬さん、入部届けは部室にあるから、二人に書いてもらって」

 そういって部長は指示を出すと

「それじゃ陸トレはじめるよ」

と指示を出し始めた。

 なかなか統率力のある部長さんだな。

 これなら結構楽しい部活ができそうだ。