25mラインからターンにかけ、近藤先輩はぐんぐんペースを上げる。
後半追い上げ型だから、とは言えいつもよりも……。
「もうスパートかけたな」
俺が言おうとしたのに……。
「でもさすがにこれじゃ、最後までもたんやろ」
だよな。後半50mもあのスピードなら、個人でもっと上位にいただろうし。
そんなこちらの意見は当然聞こえるわけも無く、近藤先輩はぐんぐんと2位の5コースに近付いていく。
ターンではその差身体半分といったところか。
「先輩、速すぎますよね?」
兄北田に聞いてみるが首を捻るだけ。
「何かあったんかな? 近藤があんなに無理な泳ぎするの珍しい」
普段の練習時も、どちらかというと楽しく泳ぐオーラを全身に纏っているんだが。
50mターンを綺麗に決め、後半に差し掛かるが。
75mラインまで来ると、前半のハイペースが響いたのは一目瞭然、最初に3位争いをしていた2コースや6コースも追い上げてきた。
その差は……身体一つくらいか。
「こりゃーあかんな」
朝倉先輩はそう言いながら飛び込み台へと歩いていった。
85m辺りに来ると再び過熱する3位争い。
「こんどー!はやく!はにゃ……はやく!」
兄北田が噛んでも萌えないんですけど。
結局引継ぎでは何とか3位を死守した近藤先輩。
「どうしたんだ? 今日はペースおかしかったぞ?」
「ああ。ちょっといつもとペース配分変えてみようと思って。実験だよ」
いやいや、いきなりリレーで実験とか意味不明なんですけど。
「そうか、で実験は上手くいったのか?」
「まあまあだな」
なんか受け答えが世間話っぽいのはどうなんだ?
レースに目をやると、朝倉先輩は……あれ?いつの間にか2位に浮上?
「あれ? 5コースがいない?」
兄北田も気付いたようで、5コースの方へ目をやると、控え選手達が呆れ顔をしている。
「何があったか聞いてみるか」
兄北田は普通に6コースの選手に話しかけた。
「ブレストの奴が飛び込み失敗して、足、着いちゃって失格したよ」
そんな初心者リタイア、ありがとう。
