結局、鮎川は2コースの矢倉さんには抜かれたものの、3位でタッチ。
「頑張った方じゃないか。一年生にしては」
フリーやブレストよりも、バックやバッタの方が、キャリアの差が出やすい傾向がある。
同じバックの近藤先輩にそう言わせるなら、十分な結果なんだろう。
そしてブレスト、伊藤部長が飛び込んだ。
伊藤部長は、まあ部長だけあって、まあまあの成績ではあるんだが。
目下の敵は2コースになるんだろうが、場合によっては4位で折り返した7コースも迫ってくるかもしれない。
このクラスでは、フリーリレーよりもメドレーリレーの方が、個々のメンバーの力量がばらばらで、傍目には面白いレースになるんだが。
伊藤部長はスムーズに泳ぎ始めた。
さすがに中学時代からブレスト一本でやっていただけあり、その泳ぎ方にも貫禄が伺える。
って本人に言うと『どーせ私は年増ですから』とふて腐れるんだろうな。
難しい年頃の娘さん達だから。
「他のコースはどんなんです?」
近藤先輩に聞いてみたが、無言で首を捻るだけ。
「俺らは、そんなに詳しくないからよ」
「つまり矢倉さんしか分からないと?」
「上位へいけばそこそこ知ってるけど、そんなに覚え切れん」
兄北田はきっぱりと言い放つ。
言ってる事は正論なんだが。うん、正論。だがなんか引っ掛かるのはなんだろう?
レースは、と見ると、伊藤部長の方が2コースよりも速いようで、ぐんぐんと差を縮めている。
それと同じく、4位の7コースもぐいぐいと上がってきた。
「こりゃ三つ巴の2位争いか?」
「やっぱり朝倉先輩は専門だけに、見ればわかりますか?」
「んなもん分かるわけないやろ。何となくだよ、勘、勘」
えーと、レースに目を戻すと、先程よりも三者の差は縮まりながら、50mターンに差し掛かった。
タッチではまだ2コースが先頭だが、身体一つない差、半身差ぐらいで伊藤部長がターン、そして、7コースは伊藤部長から身体2/3くらい遅れているだけか。
3選手が連続でタッチターンを決めていく。
