「んでも出れるだけマシだな」
「そうそう、去年は結局県予選しか出れなかったしな」
先輩達はそんな会話をしているが……
「なんで出れなかったんすか?」
去年居なかった俺には理由が分からないから、素直に聞いてみる。
「ん? ん〜ほら、バックの選手がいないだろ。バッタは飯島がやるから大丈夫だったんだけどな」
なんかあやしい言い方な朝倉先輩。
結構口が軽いから、突っ込んで聞けばもうちょっと教えてもらえるかも。
「けど、県予選は出たんですよね? その時は誰がバックやったんですか?」
「え? えっとなあ。それは……」
語尾を濁すなんてますますあやしいんだが。
「言えん事もいろいろある」
こちらは口の固い近藤先輩に言われた。
「はあ、そっすか」
そんな事言われたらこれ以上は聞けないか。
つか昨日からなんかひっかかるよな。去年の話が。
「それより応援。応援」
兄北田に言われてプールに視線を戻すと、バックの選手が次々に飛び込んでいる。
女子400mメドレーリレーの始まりだ。
バックの鮎川。
中学時代からのバック選手だけに、フォームは様になっている。
だが、タイムはまあそこそこ。一般生徒よりは速い、いわゆる部活タイム。
それでも俺よりは速いんだよな。なんだかんだ言って専門には敵わない。
『位置について』
バック独特の水中スタート。
『よーい』
各選手が身を縮めるように態勢をとる。
バックのスタートだと、この『ヨーイ』とピストルの間の時間がすごく気になる。
スターターによるコンマ何秒の差があるのは当たり前。
ただ個人的に、この差がもっとも響くのがバックなんだが、専門選手は気にならないんだろうか?
『パーン!』
各選手一斉にスタート。フライングの無い綺麗なスタートだ。
「鮎川のタイムからいけば、結構いいとこに付けてくるだろうな」
兄北田の予想だが。
「鮎川って個人はどんな感じでしたっけ?」
「まったく。浅野は寺尾しか興味がないのか?」
なんでいきなりそんな無茶振りするかな?
