ブルー・フィールド

 
「それで? 私の泳ぎ方はどうなのかな?」

 おわっ! 西岡、いつの間に?

「いくら何でも、50mくらいなら、もう帰ってくるわよ」

 言われればたしかに。

「あ! ちょうどいい。大塚。西岡にお手本を見せてやってくれ」

 泳いでいれば、変な絡みをしなくて済む。

「……じゃあご褒美は?」

「そう言ってくるのは予想済みだ」

「さすが! どんなご褒美?」

 俺が気付かないとでも思っているのか?

「ご褒美も何も、もともとアップの為にここへ来たんだろ? 俺達はただそれを見るだけだから、褒美などは無い」

 そろそろメドレーリレーの選手がアップをする時間帯だし。

「あっちゃー! バレてたか」

と、大塚はオデコを叩き舌を出す。

 どこの吉本ジェスチャーだよ。

「仕方ないわね。じゃあバッタ初心者2人の為に、ちょっと泳いできますか」

 大塚は飛び込み台に立つと、ゴーグルを装着。

 俺はなんだかんだ言いながら、実は大塚の泳ぐ姿は嫌いではない。

 綺麗なフォームで、それこそバタフライと呼ぶに相応しい姿なんだよな。

 ……まあ、だからと言って、大塚に惚れる事はないんだが。


 50mを軽く泳いできた大塚が、プールサイドに上がる。

「どう? 参考になった?」

 俺は中学時代に散々見てるから、今更なんだが。

「へえ〜浅野君より、格段に綺麗だね」

 西岡さん? 何故俺を比較対象にしますか?

「ま、こんな事でよければ、いつでも言ってきていいわよ」

 大塚には実力者が持つ余裕がみえる。

「あ、そろそろメドレー始まるし行かないと」

「もうそんな時間か?」

 時計を見ると、予定時間に近付きつつある。

「じゃあ俺達も戻るか。鮎川もリレー、出るんだろ?」

「そうだね。なんか結局浅野君はあの子と喋ってただけのような気もするけど」

 仕方ないじゃないか……そもそも俺から話しかけたんじゃないし。

「それより、行きましょ。先輩達待ってるわよ」

 西岡に促されて、サブプールを後にする。

 つうか結局俺はアップしてないけど、大丈夫か?