ブルー・フィールド

 
 50mを泳いで戻ってきた西岡がプールサイドに上がる。

「どう? ちょっとはらしくなってきたかな?」

「ん〜最初の15mくらいはバッタらしいけど、そこから徐々に溺れていってるようにしか見えないな」

「うっそ! そんなにひどい?」

「今ここで嘘を言って西岡を貶める事により、俺にもたらされる利益はいかほども無い」

「何訳のわかんない事言ってんの。もっと簡単に言いなさい」

 ちょっと哲学ってみただけじゃないか。

「あのさ、基本、泳法ってのは水面と身体の芯が水平になるんだけど、それは解かるよな?」

 西岡はうんうん頷いている。いつもあーちゃんとかに怒られている分、いい気分だ。

「で、バッタの場合、手足を動かす際に上半身と下半身が上下に動く。その時にいかに身体そのものは水平を保つかってのが大事なわけで」

 泳法に関しては説明できるレベルに無いから、まあ自分のイメージを刷り込み作業するだけだ。

「腰を動かさないように意識して、腰から上半身、下半身別で動かすようにイメージする方がいいかな?」

「でも、先生はドルフィンキックは腰を基点にって言ってるよ?」

「それは真理であって、イメージとは別だけどね」

 俺の言葉に鮎川も一緒に首を傾げる。

「素人がそれを意識しても凸凹泳ぎになるだけ。最初は下半身を使わないぐらいに無意識にしておいた方がいいと思うぞ」

「キックは要らないの?」

「でも、キックは上半身の動きに釣られて自然としてるから。威力は低いけど、バランスを崩すよりはまだマシ」

 最初から全てを叩き込むか、一つ一つクリアさせていくか、の違いだが、個人的には小さなことからこつこつと、と元参議院議員の師匠の意見の方が好きだ。