しかも、多田君が口にしたのは、部活とクラブという単語。
小学生時代にも、クラブはあった!
ボクはガラクタのせいで、ずっと将棋クラブだった。
よくおじさんの相手をしていたが、ボクは一度も勝った事が無かったけど・・・・。
そのボクがクラブ!?部活!? 考えもしなかった。
どうせ、運動系の部活なんてガラクタが耐えられない。
瞬発的な短距離しか、考えていなかった。

「短距離・・・」

頭に浮かんだ事だけ、口に出した。正確にはそれだけ言うので精一杯だった。

「短距離!?」

多田君は少しイラッと来ていた。
神木さんは天然なのか、ナイスフォローなのか、分からないけど口を開いた。

「私も短距離好きだよ。儚い距離に命を懸ける!なんかイイね!」

拳を胸の前で握り、力説している。

命を懸ける。
何かの比喩表現なんだろうけど、ボクにはそうだ。
本当に人生を懸けている。

「あ、どうしたの?山音君?笑ってるよ。なんか初めて、笑ったネ」
「え?本当に?」

恥ずかしくなって、顔を手で覆った。
それを見た神木さんは、笑っていた。
多田君は、何してんだ的な顔をしている。

ボクは、こんな瞬間に幸せを感じる。
普通過ぎる瞬間。
誰もが見逃しそうになる一瞬。
その時だけが、ボクのガラクタが、普通の心臓に戻ったと錯覚出来る。

瞬間を生きてる。
生きているんだ。

と、感じる。けど、その後は、消えてしまいたくなる。

妄想のような。
夢のような。

空想は、抱いては、消えて行く。
ガラクタは、ガラクタだ。
一般を。みんなと一緒を。
求めてはいけない。

ガラクタは嬉しさにも、反応する。一種の興奮だから。いけないらしい。

「あー。またさっきの顔ー。山音君は、笑った顔をの方がキュートだと、思うよ」
「いや、うん。ゴメン」
「なんで、謝るのー?」
「いや・・・」

ボクが、困っていると多田君が、怒った顔をして、

「陸上に入るのか、山音?」

と、言ってくれた。
意外な助け船だ。
機嫌は悪いみたいだけど、おそらく、ボクのナヨナヨしいのが、頭に来たんだろう。

「たぶん、入らないよ」
「どうしてだ?」
「まぁ、いろいろあるんだよ」
「なんだ、それ」