「ったく、笑って悪かったって…。 拗ねんなよ。 可愛い顔が台なしだぜ?」


あたしの頭を撫でながら優しい口調でそう言う遥都先生。


一見、謝っているように感じるが実際はお子様をあやすような言い方であたしを子供扱いしている。


たしかにあたしは遥都さんと比べてまだまだ子供だし感情が抑えられないことも多い。


だけど子供扱いされるのは気分がいいものではない。




拗ねたままお弁当を片付け、無言で理科準備室を後にしようとすると………


「磨菜…」


低くて甘い…あたしが抗(あらが)えない声であたしの名前を耳元で囁いた。


いとも簡単に立ち止まったあたしは振り向くことはせず、お弁当をギュッと握りしめた。


あたしはそのまま遥都さんが次に言う言葉を待つ。


「笑って悪かった。 でも…白い首筋に真っ赤なキスマークは肌に映えてると思うぜ?」


最初の一言は真面目だったのに、いらない言葉を付け足して意地悪な顔をする遥都さん。


そのままヤラシイ手つきであたしの首筋を撫でた。


「今日の夜、楽しみにしとけ」


悪魔の囁きを聞いたあたしは足早にその場を後にした。