「ね、今度の遠足!楽しみだよね!」


塔子が話題を代えてくれた。
気を使ってくれたんだと思う。


「そだね、炊事遠足って言ってたね。」
「アタシ料理できないんだよなぁ~・・・」
「ヤバイべ?アタシもあんま出来ない。」
「2人、揃いも揃って・・・アハハ!」


2人で大笑いした。


来週は、炊事遠足だ。
新クラスの交流を深める、1学期最初の
イベントだった。


「それまで、いい人見つかるといいね!」
「・・・ん、お互いにね♪」
「それまでに杏里は、昔の恋心に
けじめつけて!新しい恋を探そっ!」
「まだ、そんな気持ちには
なれないけど・・・でも、そうだよね。
いつかは忘れなきゃいけないもんね。」


「実はアタシはもぉいい人居るけどっ!」
塔子の告白に正直びっくりした。
まだ新学期が始まって1ヶ月程なのに。


「え??塔子、このクラスなの?」
「ん、そうだよ!あのねぇ~・・・」


・・・ごにょごにょ。


耳打ちしてくれた。
塔子が言ったその「名前」の主を探す。


「・・・伊東光喜くん?」
「そ♪野球部のピッチャーだよ♪」


伊東光喜(いとうこうき)君。
野球部のピッチャー。
1年の時、隣のクラスだったから
顔は知っていた。


結構1年の時からモテていると
噂で聞いてた。
多分、塔子もその事を
知っていると思う。


「・・・何で??」
「んとね、アタシ部活やってると
野球部の練習風景を見れるぢゃん?
うちらのコート側で、伊東君が
ピッチング練習してんの。
その姿もかっこいいし・・・
それに、この前たまたま野球部と
同じ時間帯に部活終わってさ。
話してみたんだ。いい感じだったよ。」


そっか、
塔子は野球部の練習風景を
見れるんだもんな。
羨ましいなぁ。


「遠足の時までにもぉ少し
話したりして仲良くなれれば
いいなって思って!」


塔子は目をキラキラさせていた。
アタシも塔子みたいに輝きたいなぁ。


(新しい恋)かぁ・・・。
それもいいのかもしれないなぁ。
アタシは自分なりに、気持ちに踏ん切りをつけた。