それからしばらく、
お互いの事を話した。



私は、
翻訳の仕事をしていて、
あまり外には出ず、
自宅兼仕事場で
一人で過ごしている事…



五年前までは、
通訳の仕事を主に
海外にいた事…。





彼は28才で、
雑貨屋さんの店長だという事。


ターボくんと二人暮しで、
母親のミユキさんは、
たまにターボくんの様子を見にきたり、

仕事が忙しい時は、
預けたりしてる事。








もっと、
彼の事が知りたい…



もっと、
彼と一緒に居たい…




そう想うのと同時に




自分の中で警告音がなる。




今なら、
まだ間に合ぅ。






今なら、
忘れる事が出来る。





今日のように

偶然出会う事も

もう無いだろう‥。






「もう…帰らなきゃ」



『送るよ』






彼の言葉に首を振った…



早く離れなければ…


早く…早く…


『また会えないかな?』 





自分の中の、

警告音が大きくなる。




私は、
少しだけ微笑んで歩きだした。



振り向かずに歩く…





自分を包んでいた



再生しかけた感情から




そっと手を離しながら…