bitter sweet

「と、とにかく上れ、落ちたらどうすんねん!?」

 和紗の言葉に私は大きく首を横に振る。

「む……りぃ……ッ」

「ほ、ほんなら……ゆっくり、ゆっくり片手ずつ降りて来い」

 右手、左手と片方ずつずらしていくと、上の方で、ぶち……ぶちと音が聞こえたと思うと、突然体が下へと下がっていった――。







「雪和ッ!!」

 落ちる!!低いけど、もし打ち所が悪ければ死……いやッ!和紗に何も言ってない……まだ何も伝えてないのに――。

 ドサッ!と音がしたものの痛みはあまりない。上の方から落ちた事で、カーテンがうまい具合にクッションの役割を果たしてくれた。

「雪和ッ! 大丈夫かッ」

 和紗が慌てて駆け寄ってくる。と、大きな物音に気付いた近所の人達が、何事があったのか、とざわめきが聞こえる。

「和紗ッ! 行こうッ!!」

 急いで立上がると、私は状況を掴めていない和紗の手を取り、走り出した――。