bitter sweet

 ついさっきまで、気まずくて目合わされへんかったんが嘘みたいに、雪和は目を輝かせてお願いしてくる。

「しゃーないな~」

 口ではそんな事言いながら、内心めっちゃ嬉しかった。いつもはマコトさんが一緒にいてるけど、今日は雪和の視線独り占め出来るし。

 僅かながらの弾けるレパートリーの中から、俺が気に入ってる曲を選んだ。

 雪和の期待に満ちた視線が俺に向けられてる。

 ……。

 …………。

 ……雪和、見過ぎや……ッ!

 めっちゃ緊張して手が震える。

「雪和、ちょー目閉じといてくれへん?」

「なんで?」

 ……じーっと見られとったら緊張するからやんけッ。

「し、知らんのか? アコギって目閉じて聞いてた方がエエんやぞ?」

 ……嘘やし。けど、全然疑わん雪和は「うん、わかった」と素直に目を閉じる。

 良かった、これでなんとか。今まで一人で何遍も練習してた曲。

 爪弾きながらギターを始めたきっかけを思い出す。