bitter sweet

「着いた着いた~っと」

 和紗に連れられ、辿り着いた場所は15階建てのマンションの前。

「何、ここ?」

「俺ン家」

「……へ!?」

「ま、正確には俺の叔父さんが住んでるんやけどな。ちょっと居候さしてもうてんねん」

 遠慮せんでエエから、と言う和紗に促されるままエレベーターに乗り6階に着く。

「ちょ……和紗ッ!」

「なんや」

「なんで和紗の住んでる所なんよッ!? どっか他……」

 行こう、と言い終わる前に和紗が口を開く。

「そやったらお前、金持ってるか?」

「持ってない……」

「せやろ。第一、俺ら制服で中坊って丸分かりやんけ。そしたら、補導されへん場所はここしかあれへんやろ?」

 本当に和紗って、悪知恵だけはよく働く。多分、関西にいた時からこんな事ばっかりしてたんだろう。

 そうこうしてる間にも和紗は鍵を取り出し、開いたドアから手招きをする。

「ただいま~ッ、マコトさんいてる~?」

 マコトさん?誰?それにしても私、男の子の家って初めて入る。緊張しながら、廊下を進むと奥の部屋のドアが開いた。