bitter sweet

 そう思った瞬間、強い風が吹いた。

「あれ……?」

 砂埃を避ける指の隙間――空から一枚の紙がひらひらと舞い落ちて来る。

「――……よ、っと。ナイスキャッチ!」

 ぱしっ、とその紙を掴み取る。

 なんや、プリントか。名前は……瀬戸雪……わ?かず?なんて読むんや?

 ……サボってる奴のんかな。けど授業サボんのにこんなん持ってる思えへんけど。

「和紗くん! 校長室行くよ……って、和紗くん!?」

「ちょー(※方言で『ちょっと』の意)待っとって!」

 屋上行くのにどっから行けばエエんかわからへんけど、とりあえず階段上がれば着くやろ。

「ラッキー、正解や」

 屋上へのドア……人影が近付き離れ、を繰り返してる。

 カチャ

 てっきりサボってんのは男で、隠れてタバコでも吸ってるもんや思ってた。けど、俺の前には、ぎゅっ、とかたく目を閉じてる女が一人。顔が強張ってる。

「何してんねん、お前」

 俺を見て安心してるっぽい女。校章きっちりつけてるし(さっき光ってたんは校章か?)、サボるタイプには全然見えへん。

 しっかしこの女、反応がいちいち面白い。まぁ可愛げない所もあるけど。