太陽が地平線から顔を出し、そっと教会のステンドグラスを見つめていた。温かく何処か悲しげな光が、鬱蒼と茂った青を飛び越えて、西の聖堂をも照らす。
西の聖堂は現在では礼拝には使われておらず、引き取られた孤児達の部屋になっている。

神父フォル・セティは、自室から西の聖堂を見ていた。緑に近い色をした瞳からは、太陽と同じく温かい視線が注がれている。椅子から立ち上がると、ふわりとブラウンの髪が肩で揺れた。
何時の時代も戦争の犠牲になるのは弱い者たちだと、彼は溜め息を吐いた。大分前に失った筈の右手が微かに痛んだ気がして、僅かに眉間に皺を寄せる。

「フォル」

唐突なノック音と声に、フォルは現実へ引き戻された。毎日の早朝訪問が、何年経ってもしっくりこないようである。

「おはよう、エルダ」

彼女……エルダ・フロージュンは笑顔のまま、自身よりも年下のフォルを見た。寝癖の酷い彼の頭を撫で、抱き締める。愛しい者に行うようなその行為が、フォルは嫌いだった。自分が子供扱いされているようで、というのだろうか。それは定かではない。
唯一予測ができる理由は、途中息苦しそうにしてもこの時ばかりは伝わらない、と言う事だけである。