プメエレルの西の外れに位置する街、ヴィーヴォ。
此処は国境を超えたばかりの旅商人が休む事のできる、一番近い街だ。
早朝の霧深い道を、もう何台も馬車が行き交っていた。

そんな大通りから少し外れた所に、ソレはあった。

『ヴィーヴォ街ヴァーチェ通りグラツィオーソ教会、及びカランド私立孤児院』

誕生日ケーキに乗っている薄いチョコレートの板のような錆びた鉄板に、これまたホワイトチョコで頑張って絞り出したような字で、その看板は書かれていた。

門から見える教会とその脇の木々は、熱心な信者による寄進があったのか、酷く美しかった。しかし、あまり人気があるとは言えず、墓地から漂ってくるような重苦しい空気が其処を支配していた。そのアンバランスさのせいか遥か上空を飛んでいた小鳥達でさえ、教会の上を避けるように迂回していった。

そんな死んだような駄々広い教会の敷地に、最近は明るい笑い声が響いている。