『ねぇ…秀哉、じゃああたし待たない。

けどね、約束がほしい』


「やく…そく?」

『うん、約束っ』

「どんな約束?」


『あのね、10年後のこの日…つまり12月24日に、お互いまだ相手のことが好きだったら



またこの場所で会おうよ』


―――
秀哉は来ないかもしれない

あれから一度も連絡をとってないから、


もしかしたら、アメリカで好きな人が出来て結婚して子供もいるかもしれない…


けど、あたしは
クリスマスイヴが終わる

23時59分59秒まで
来るかどうかもわからない人を待とうと思う



あたしの気持ちは今も昔も変わってないから



約束は破るためにある

確かにそうかもしれない…

けどね、
約束は守るためにもある


あたしはそう思うんだ


今日もし秀哉が来なくてもあたしは、後悔しない



だったらこの10年間待ってたあたしは馬鹿だっ
てみんなは思うかもしれない


けど、約束したから…

自分に正直に生きるって悪くないよね?


時計を見るともう23時をまわっていた


本当に秀哉は来ないかもしれない


だんだんと不安になって来たあたし


けど、あたしは10年経っても変わらない、古ぼけたベンチに座って待つ



まるでこのベンチは、あたしの気持ちを表しているかのようだった





「奈美っ」


振り返るとそこには…