「ありがとうございました!」

「桜井君、今日はもう上がっていいよ。明日から中間考査だろう?」

「え!?マジっすか店長!!」

「ああ、高校入学から一ヶ月。最初のテストで生徒の印象って変わるからねぇ……頑張らないと。」


俺の名前は桜井 良樹、どこにでもいる高校一年生だ。4月に高校に入学してから約一ヶ月。バイトにも慣れて順風満帆な高校生活を送っている……勉強以外は……

「そういうもんですかねぇ……でもテストの点数じゃ生徒の印象なんて変わらないんじゃないっすか?」

「甘いなあ、桜井君。あまり良く分かってないみたいだね……僕みたいになっても良いのかい?」

さっきから僕に早く帰りなさいと諭してるのが僕がバイトしているコンビニの店長で水内さん。下の名前は……分からないんだよね……

「そりゃあ40過ぎても本社に行けずにこんな田舎のコンビニで店長やらされてる水内さんみたいにはなりたくないですよ〜」
「あ〜分かった分かった。とにかく早く着替えて帰りなさい!もう20時過ぎなんだから。」

「そこまで言うなら……帰りますよ……流石に勉強しないのはまずいと思うし……」

俺はこうして高校生のアルバイトにも気を使ってくれる店長に内心尊敬しながら高校の制服に着替えた。

「んじゃ店長。次に会うのは水曜日ですね!」

「おう!テスト頑張れよ!」

はーいという間抜けな返事をしてコンビニから外に出る。ここから家まではバスで30分弱。……結構遠いんだよ。

コンビニ目の前のバス停で時刻表を見るとちょうど32分のバスがあった。今は29分だから後少しで来るはずだ。

「おっかしいなあ……」

もともと32分のバスに乗るはずだった。でも今は45分。もうすぐ次のバスが来る時間だ。いつまでたっても来ないからおかしいなぁ……と思ってバス停に書いてあった営業所の電話番号に電話しようと思ったんだけど、「こいつは10分も待てねえのか。バスは電車じゃないんだから遅れるっての!」って思われるのも嫌だったから電話しなかった。チキンだなぁ……



流石におかしい。と思ったころやっと坂の上からバスのヘッドライトが見えてきた。

「お待たせ致しました〜津田沼駅行きで〜す。道路渋滞の為、32分と47分のバスが連なっておりまーす。」