医師が到着したときには見るも無残な状況で、ベッドに設置してあるライトはあらぬ方向を向き、掛け布団はいくつものしわを作り床に落ちている。

シーツもはがされ、普段は見ることのない敷布団が八割ほど姿を見せていた。

個室だったため同室の住人に迷惑をかけることは無かったが、その叫び声は廊下中に響き渡っていた。

男性医師が絵美を抱き抱え押さえ込もうとするが、癇癪を起こした子供のように体全体を大きく振り回して拒絶される。

幾度となく抱き抱え、拒絶され、数十分が経とうとしていた頃、体力が無くなったのか、しゃくり上げながらも力無く医師にもたれる絵美。

その間廊下で待っていたのか、一人の女性が病室へと入って来た。

「絵美ちゃん、久しぶりね」

ゆっくりと顔を上げて見たその人も、背丈ほどの羽根を背負っていた。

小さい頃に見たことのある天使。記憶も曖昧だが、それよりも、なにもかもがどうでもよかった。

落ち着いたら一緒に帰りましょうと、話し掛ける彼女に対して何の感情も沸かない。

はだけたタオルの下には、誕生日の朝に着ていた破けたシャツ。

胸元が広がっているのも、ふとももが丸見えになっていることも、家族が居ないことも、一緒に帰ろうと誘われたことも、どうでもいいと思った。

小さく頷いた。


‡‡‡‡‡‡