何の前触れもなく絵美の輝きは羽根だけに集中し始める。

髪の色も徐々に黒く戻っていく。それと同時進行でケイの羽根が徐々に白くなり、輝きを帯びて来た。

「羽根が…」
ケイがじっと自分の羽根を見つめ続ける。

絵美とケイの羽根が同じくらいの輝きに変わった時、一瞬にして光と共に羽根が消えた。

「羽根が消えたわ…」

まじまじと二人の背中を見る薫。

「もう天使は居ないから、あたしから手を離しても大丈夫よ」

その言葉を聞いて薫は思い出したかのように自分の背中を見て羽根が無いのに気付き、床に崩れ落ちながら大声で泣き始めた。

「え、絵美ちゃん…有難う…」

顔を覆う手の指の間から涙が伝い流れる。

「どう?父上。一瞬でも天使になれた気分は?」

聞かなくても解るほど顔が涙で濡れている。

「ミアと…ミアと同じ天使になれたよ…本当に有難う。このまま人間として生活すればいつか死ぬことが出来る。子供は死んでしまったけれど、ミアと子供の分を…」

「父上、ちょっと待った。あたしも死んだけど、半分だけ。記憶もなにもかも残ってる。あたしは絵美だけど、父上の子供のエミでもある。勝手に殺さないでね」

ぷくっと頬を膨らませる絵美を、途中から顔を上げてみていた薫が笑う。ケイも涙ながらに笑顔を見せた。