「父上!」
満面の笑顔で絵美はいきなり立ち上がった。薫はよろけながらも椅子に座り直す。
「あたし、全部判った。薫さん達を天使から開放する方法も、父上を殺す方法も」
笑顔のまま喋る絵美に、怪訝な顔をする薫。確かに自分の父親を殺すと笑顔で言えるものではない。
「薫さん、大丈夫。あたし、全部判った」
変わらず満面の笑顔で言う絵美に、引き攣りながら笑顔を返すしかなかった。
「父上。母上はまだあたしの中で生きてる」
ケイに向かって笑顔を見せる。数秒の無言の後、ケイは少しだけ目を潤ませた。
「本当か?本当なのか?」
絵美に食ってかかりそうな程身を乗り出して言う。
「うん。でもすごく弱ってる。人間の中で少しずつ体力を回復していって、一時は元気な体に戻ったけど、これだけ長い年月が過ぎて、本当はもう寿命で死んでる。
だけど、父上に会う約束を果たすために、あたしの体力を使って生きながらえていたの。
本当はあたしも既に生まれて来ていた。だけど、母上に力をあげていたから成長がすごく遅くなってたの。
父上が力をくれなかったら、もっともっと長い時間成長するのに時間がかかっていたわ」
最後にありがとうと付け加える。
「ミアには、ミアにはいつ会えるんだ?」
興奮気味のケイに、絵美は落ち着いた表情で答える。



